Gluttony12

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僕は彼になり、彼は僕になった。
体は彼のものだ。僕という個は、すでにない。
彼は彼として生きるだろう。
僕の魂を抱えて、あくまで彼としての人生を生きる。
僕がそれを望んでいるからだ。

だが、彼は完全に僕の死という呪縛から解き放たれたわけではない。
僕が彼の目の前で死んだことに変わりはないのだ。
彼の意識は、永遠にそのことを忘れられはしない。
ふとしたときに僕のことを思い出し、彼は泣くだろう。
ならば、泣いた後に笑えるように、祈りを捧げよう。
彼の中で、彼の幸せを願っていよう。
それこそが、僕の幸せに他ならない。


(僕は眠る)


僕――ルカは、ゆっくりと目を閉じた。
彼の心臓の音が聞える。やさしい声が聞える。
愛しい音を聞きながら、僕の視界がどんどん暗くなった。
そして、光に包まれた。





僕は夢を見た。
そこは、街だった。レグヌム。テノスとガルポスとマムート。グリゴリの里。
イリアが見えた。スパーダが見えた。エルが見えた。アンジュが見えた。
父と母が見えた。エディとニーノ、グリゴリたち、見知らぬ人が見えた。
全く知らない風景が見えた。町であり、森であり、荒野であり、草原だった。
それらを夜が、昼が、日暮れが、朝焼けが包む。

その中心に、彼がいた。
笑い、泣き、怒り、挫折し、成し遂げ、
ときに不幸であり、ときに幸せに生きていた。

(よかった)

長い、長い夢の途中で、僕は微笑んだ。
そして、眠った。


二度と、まぶたを開くことはなかった。





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