クリスマスパーティはつつがなく終了した。 僕はイリアやスパーダにいじられながら料理を平らげ、いじられながらプレゼント交換をし、いじられながらビンゴゲームをして、ぞんぶんに楽しんだ。 ……あれ、なんかいじられるのが普通になってない? まあいいんだけど……。 とにかく、お腹もいっぱい、そして機も熟した。 今はパーティ後のお片づけタイム。都合のいいことに、僕とイリアはペアで皿洗いを担当している。今をおかずしてどこに戦機があろうかという状況である。 僕は洗い終えた皿を布巾でぬぐいながら、鍋をガシャガシャとタワシで鳴らしているイリアの横顔をチラ見した。 きゅっと引き締めた唇と真剣な目、鼻のカーブの幼さと、まくりあげた袖からのぞく白くて細い二の腕。リカルドのような細マッチョ骨がちがちボディもいいけれど、女の子特有のやわらかさと儚さを兼ね備えた魅力も、やっぱりたまらない。 僕はどうやら色白が好きらしい。僕自身、かなり肌色が白くてきめが細かいほうだから(自分で言っちゃった☆)、ナルシストみたいで気が引けるけど……好きなものは好きなんだもぉん! もだえる僕の心が顔に出ていたのか、イリアがふっと振り返った。 気が強そうな瞳……あぁ……僕は釣り目も好きらしい。リカルドのしゅっと刃物のようにスマートな釣り目、イリアの猫科動物みたいなくりくりとした釣り目……。 そのくりくり釣り目が、今僕だけを見つめている! うわああああ! いええええい! そんなに見られると……ドキドキしちゃうよおおおああああああ!!! 「何よあんた、ジロジロと……きっもち悪い」 そしてこの毒舌! 「あれ、顔赤いわよ。どうしたの、熱でもあんの? なっさけないわねえ、先戻ってなさいよ。こっちは片づけとくから」 そしてこの不器用な優しさ! まさにツンデレの鏡(リカルドはクーデレだ)。 「熱はないよ」 僕は荒れ狂う海のような心境をものともせず、持ち前の演技力を生かして言った。 ネツハナイヨというように、早口で告げた僕の言葉に雰囲気の違いを読み取ったのか、イリアの動きがぴたりと止まる。 「実は……その……」 僕は右のポケットに、両手を入れた。出来る限りもぞもぞと、気を持たせるように。 「君に、渡したいものがあって」 両手で包んだプレゼントを、そっと取り出す。あえて包装紙は見せず、リボンだけ覗かせるようなつつましさがポイント。たっぷり時間をかけてじわじわ全貌を明らかにすることによって、イリアの突発的な照れ隠し”あらぁ、ご主人さまにプレゼント? ありがたくもらっとくわ〜、ルカくぅん”……などというリアクション、名づけて照れ隠し反射的ドS言動を封殺するのだ。戦いとは、敵のパターンを知りつくしてから作戦を開始するものである。 ちらりと視線を上げてみると、イリアはきょとんとした顔をしていた。その顔色が、じわじわと赤くなってくる。ぱくぱくと口を開け閉めして、何か言葉を発しようとした瞬間……例の反射的ドS言動を発動しようとしたとき……僕の決め台詞が火を吹いた! 「君に気にいってもらえるように……一生懸命選んだんだ! 受け取って……くれるかな……?」 語尾にゆくにつれて小声で、僕は言った。 そしてすかさず放心しているイリアの両手を強引に取り、プレゼントを握らせる! イリアの後の先……制したり! これはイリアも言葉がない。彼女の顔面温度がありありと上昇しているのが見てとれた。僕の完璧な言論封殺を受けたイリアは、なすすべもなく照れまくるのみ。その眉尻が、きゅっと切なげに下がる一瞬を見届けて、僕は確信した。 完 全 勝 利。 ふふふ、今夜は美味しいオレンジジュースが飲めそうだぜ。 「おーい! ルカ! イリアー!」 「うわぁああああああああ!」 「ぎゃあああああああああ!」 とつぜんの大声に、僕らは二人そろって飛び上ってしまった。 「うお! なんだよ!」 台所と居間を繋ぐすだれを手でよけて顔を突き出したスパーダも、思わず飛び上がっていた。 「ななな、なんだよスパーダ! いきなり!」 「なにって、ラウンジの掃除が終わったから声かけに来たんだよ! そっちこそなんだあ?」 なんてこったい! 思わぬ伏兵。勝利の直後は気が緩むもの、とどこかの誰かが言っていたけど、それは本当だった。 「ここここれは、その、皿洗いが終わったんで……そ、そうだ! バックステップの練習をしてたんだよ! ねぇイリア!?」 僕はたぶん、全身から汗をダックダクと流しながら弁解した。 「そそそ、そうよ! バックステップは大事だから! ガードするとコンボが途切れちゃうから!」 イリアもダックダクだ。ごめんね、イリア! しかし、こんなムチャブリにも付いてきてくれるイリアって、本当にいい子だ。 スパーダは、さもうさんくさげに眉をゆがめた。 「ハア? お前ら台所でなにやってんだよ……まあいいや、片づけ終わったんならオレぁ寝るぜ。食い過ぎで眠くなっちまった」 「う、うん! どうぞ泥のように眠って、永遠に!」 「死ねってことかオイ!」 「そそそ、そんな、滅相もない! 言葉のアヤでござる!」 「ござるってお前……なーんか、やっぱり様子がおかしいなあ……」 アドリブに弱い僕はすでにしどろもどろ、どうしようもありません。 「う〜ん……おかわりでたのかあ? しかしぃ〜……」 そのとき、のんびりとした声が、ダックダクな僕らとそれを睥睨するスパーダの間で流れた。コーダだ。 「バーカ! お前がバカスカ食べまくるもんだから、宿中の食料がなくなっちまったんだよ! おい、イリア、ルカ、そいうことだから、明日は早起きして買い出しを手伝えってリカルドからのお達しだ。ったく、マジだりーぜ……」 スパーダは不機嫌な顔で、足元でうとうとしているコーダの襟首を掴んで、 「おいイリア、こいつ、お前の部屋に放り込んどくからな! 旅用の食糧に手ぇつけねぇよう、しっかり見はっとけよ!」 と言い残し、鼻ちょうちんをふくらませているコーダをぶらんぶらんとぶらさげて立ち去っていった。僕とイリアの不審は、すでに彼の心にないらしい。スパーダが鳥頭で、本当によかった……。 「はあ〜……」 僕らは同時に深い深いため息をついた。この、どっぷりとした疲労感。もう、ムードなんて気にしている状況じゃない。 「じゃあ、私、寝るわ……」 「うん、おやすみ……後、僕がやっとくから……」 「あ〜、助かるわ、どうも……。あ、プレゼント、ありがとね……」 「え、いえいえ、気にいってくれたら幸いです……」 友だち以上恋人未満の交わす会話じゃないよ、このアッサリ感……。熟年夫婦でも、もうちょっと盛り上がるよ。僕の予定では、あと30分はイリアとイチャコラ過ごす予定だったのに。 こうなったら、後半戦、もといリカルド戦に賭けるしかない! 皿をすっかり片づけ、二階へ上がろうとしたとき、ちょうどアンジュ&リカルドが、階段をのろのろとのぼっている姿が見えた。 「あははははは! 聖女っていってもぉ、お酒は大好きですしぃ、アイテム盗むのは得意ですしぃ、そうそう、一年ぐらい前かなあ、司祭さまのカツラをこっそりローバーアイテムしちゃってぇ」 すでに出来上がっているアンジュに、あぁ、うん、などと事務的な返事をしながらも、彼女が階段から転落しそうになったときさりげなく支える位置取りをしているリカルドは、やはりパーティ全員のお父さんなんだなあと思った。僕にとっては”運命の友”を通り越して”可愛い恋人”でもあるんだけどね! えへん! いやあ、これはイバっていいでしょ〜。 「あのころはよかったんですよぉ、本当に。私もねぇ、怪我してる人や病気の人を治してあげてぇ、ありがとうありがとうって言われてましてねぇ、そーれがちょっと巨大化して聖堂を潰したぐらいで……あら、ルカくん?」 半ばおばちゃんみたいになっていたアンジュが、階段の下でなんと声をかけたらいいものか悩んでいる僕を見つけた。わあ、目が血走ってる……。どれくらい飲んだんだろう……。明日のことは、アンジュに黙って、そっと寝かしておいてあげようかな……。 「ミルダ」 久しぶりに(といっても数時間ぶりだけど)聞くリカルドの声は、脳髄に浸透した。この声、この顔、この性格……ああもう、たまらんしょ。 「ミルダ、聞こえなかったのか?」 「あ、うん……ちょっと疲れちゃって」 「なら早く休め。明日のことは聞いているだろう?」 「明日のことって、にゃんですか〜?」 ふにゃふにゃの腰砕けになったアンジュの額を、リカルドはこつんと小突き、 「なんでもない。お前こそ早く寝ろ」 やっぱり、リカルドもアンジュの二日酔いを心配しているようだった。明日のことは知らせずにおくつもりだ。やっぱりというか当然というか、さすが保父さんだ。 「ほら、行くぞ」 リカルドがアンジュの腕を引く。 「ありゃりゃ、それが依頼主に取る態度れすかあ〜、リカルドひゃあん〜」 「泥酔した依頼主を無事に部屋まで送り届けるのも護衛の仕事だ」 千鳥足のアンジュを引きずりながら、ずるずると階段を上がっていく。この絵、さっきも見たぞ。スパーダとコーダだ。コーダとアンジュが同じレベルだって言ったら、アンジュ、怒るだろうなあ。怒ったアンジュも可愛いんだけど……おっと、だめだめ、だから三股はしないって(以下略)ってそうじゃなくってね。 僕はリカルドがアンジュの自室のドアを開けたのを見計らって言った。 「ねえ、リカルド、今日部屋に行ってもいいかな?」 「早く寝ろと言っただろう。……セレーナ、そこに洗面器があるから、もしものときは頼むぞ。部屋を汚すと賠償金を取られる」 「相談があるんだよ」 アンジュを部屋の中に押し込みながら、リカルドの目がこちらを向いた。 「……まあいい。手短かに済ませろよ。……おい、セレーナ、そこはベッドでは無い、タンスだ。左に向かえ左に」 よし、アポは取り付けたぞ! それから三十分後。僕は廊下に誰の姿もないことを確認し、リカルドの自室の前にニンジャのような足取りで進むと、死にかけのキツツキのようなノックをした。鋭敏な彼のことだから、このぐらいでもちゃんと聞こえているのだ。 予想通り、十秒と待たずドアが開いた。リカルドの背の向こうに、ばらばらになったライフルが見える。僕は銃に詳しくないから、どこがどの部品かは分からないけど、独りきり、部屋の中で黙々と銃の整備をしているリカルドの姿を想像するだけでチーズスープが三杯は飲める。 「入って、いいよね?」 リカルドは無言で引き返し、ベッドのそばに座った。 ここでひとつ。僕のハニー自慢をまたしちゃうんだけどぉ、リカルドったら、黙って背を向けるくせに、僕が部屋に入るまで、ドアを支えたままなんだよね。このさりげない気遣い、もう、かぁっこいいったらない。うらやましいでしょ、うへへ! 僕は小さな一人がけのテーブルの椅子を引っ張って、ベッドの前までおくと、その上にちょこんと座った。実は、僕の身長ならゆうゆう足が届くんだけど、こちとらイメージ商売だからね。わざと深めに座って、足を浮かせてるんだ。 「アニーミのことか?」 開口一番、リカルドはそう言った。僕が相談するといったらイリアのこと。パーティの常識となりつつあることだけど、リカルドが言うと重みが違う。というか、彼のいじらしさに泣けてくる。だって、僕とC以上の関係を持っていながら、さらっと顔にも態度にも出さず、嫌味も言わずに聞いてくるんだから。 ちょっと罪悪感が胸をついたけれど、二股は後悔したら負けだ。やっちゃったからには、やっちゃった義理を通さなければならない。 「うぅん、そうじゃなくて……」 僕はやはり両手で宝物を持つようにプレゼントを包みながら、リカルドに差し出した。 「リカルドにだけ特別に、買って来たんだ。迷惑かもしれないけど……」 「俺に?」 「うん」 僕は罪悪感をふりはらって、真っ直ぐリカルドの目を見つめた。 「リカルドは、僕の大切な人だから」 リカルドの眉が、ぎゅっと寄る。僕はしんぼう強くリカルドを見つめ続けた。やがて、彼の顔がふっと穏やかになる。 「ありがたくもらっておく」 リカルドが、プレゼントを受け取ろうと、手を伸ばした。僕はすかさず、彼の手を握り返す。リカルドの口が一瞬開く。 よし、押し倒そう。僕は、ぐぐぐっとリカルドに顔を寄せた。 「明日早いんだぞ」 厳しい顔でリカルドが言う。そんなこと言って、明日の心配しているあたり、察しがついてるじゃない〜。 「おい……」 ドドド。 「……あれ?」 なんか……遠くから……地響きみたいな音が……。 ドドドドドド。 地響きじゃない……近づいてきている……! これは……足音だ! こんな足音を立てるのは、僕が知っている限り一人しかいない……! 「ルカァアアア! あんたねぇえええ!!!」 バアーーーンッとドアをブチ壊す勢いで、イリアが入って来た。 あぁ、やっぱりぃ……! 「自分の部屋にいないと思ったら、こんなとこに! アンジュから聞いたわよ! それで逃げてるつもり!?」 「えっ、えっ!?」 「あんたさあ、ふざけてんの!? 私をからかってるわけ!?」 「え、あの、おっしゃっている意味がよく……」 「しらばっくれるんじゃないわよ! こんなもん、どう使えってのさ!」 と、グバっと広げられたイリアの掌の上に乗っていたのは、ピカピカのかみそり。 ……ああああああああああああ! どさくさにまぎれて、プレゼント渡すほう間違えたぁああ!!! 「なにこれ!? どういう意味!? 手首でも切れってことかコラァ! それともなに!? 無駄毛処理しろってこと!? あんたは、私を無駄毛ボーボーの女として見てたわけね!? そうなのね!?」 ズッガンズッガンと秘奥義で降ってくる隕石のような勢いで詰め寄るイリアにおののきながら、僕は懸命に考えていた。 どこだ!? どこで入れ替わった!? ああああ、あそこだ! 二つのプレゼントを見比べながら、ほくそ笑んでいたあのとき! イリアが突然ドアを開けたもんだから、とっさに背中に隠してしまったあのとき! あの瞬間、二つのプレゼントがごっちゃになってしまったんだきっとそうだ! と、原因を解明しても事態は全く改善されず。じりじりと迫るイリアに、僕は生まれ始めて”今、この世から消えてしまいたい……”と本気で考えていた。 だ、誰か助けてぇ! 殺される! ヘルプミー! そのとき、またもや神の声がふりそそいだ。 「アニーミ、それはひげそりだ」 「えっ……」 イリアが、リカルドのほうを見る。彼は……赤い包みのプレゼントを持ちながら、ため息をついていた。 「どういうことよ?」 「ミルダのやつ、渡し間違えたらしい」 そして、しゅる、とリボンをほどく。そこには、僕がイリアへ贈るはずだった白薔薇の髪飾りが入っていた。それを見て、とげとげしかったイリアの視線が緩む。 「こっちをお前に贈るつもりだった。お前が持っているやつは、俺のために買ったらしい」 俺の……ために……? ま、まさか……その言い方は……もしかしてここで、本妻と愛人の血みどろの修羅場をするつもりですかリカルドさんっ!? などと考えていた僕は、次の彼の言葉に打ちのめされた。 「日頃世話になっている礼とか言ってな、余った金で俺の分も買ったらしい。ちょうど、残金がそれを買えるぐらいだったらしいからな」 その後、まだ釈然としない様子のイリアを連れて、リカルドは出て行った。僕がいないところで、あくまでも説得するらしい。 リカルド……。 「普通に渡さんからややこしいことになるんだ」 それから数十分。僕はリカルドの部屋のベッドで枕を抱きながら、横たわっていた。カチャカチャと、椅子に腰かけた彼が銃の部品をいじる音が聞こえてくる。 「うん……」 僕はすっかり元気をなくしていた。だって、だって……。 「……怒らないの?」 「怒る理由がない」 彼の声は、優しかった。 彼は何も言わない。言わないのに、全部気付いている。 僕のあさはかな計略などそっくりお見通しで、そのくせ黙って僕を許している。 悪いのは僕のはずなのに。なぜかはらわたが煮えくりかえった。 大人ってずるい。 ずるくて、優しすぎる。 そんなんじゃ、幸せを逃がしちゃうぞ。黙って優しくするだけなんて、僕をつけあがらせるだけなんだから。僕のこと、嫌いになったっていいんだぞ! 僕は枕をぎゅうと抱きながら、視界をくもらせていた。悔しいはずなのに、なぜか涙が次から次にあふれだしてくる。 僕の様子に気づいて、リカルドが苦笑した。 「しょうがないやつだな」 「どっ、どうせ、しょっ、しょうがないよ」 えづいてうまく喋れない。それがまた、悔しかった。 「馬鹿なやつめ」 「うん……」 もう少し、許されるような気がした。わがままを許してくれる彼と、純粋な彼女の間で揺れることを。つたなく危うい綱渡りを続けながら。 そのまま、僕はすうと、眠りに落ち……、…… ……。 …………。 ……………………。 「あのう……」 「ん?」 「なんで、ライフルの銃口を僕に向けてるのかな?」 「偶然だ」 偶然じゃないよ! 完璧に、僕の脳漿をぶちまける位置でロックオンされてるよ!? 「やましいことがあるから、そう思うんじゃないか?」 彼の目がきらりと光った瞬間、音もなくドアが開いた。 「いやよねぇ、やましいことがある人って。なんでもかんでも、悪い方に考えちゃって……」 イリアだ。ぶらりと垂らした両手に、きらりと光る二丁拳銃が、暗い廊下の闇の中、妖刀のように光った。 すっと、リカルドが立ち上がる。もちろん、僕の額に、ライフルをロック・オンしたまま……。 「おおまかな事情は、話させてもらった」 ガキン!(リカルドが撃鉄を降ろす音) 「あんた、ずいぶん演技派だったのね〜? えぇ? ころっと騙されるとこだったわ」 ジャキッ!(イリアが拳銃を構える音) 「あ、あの……ぼ、僕を、どうする、つ、つ、つもりですか……? えっ、なんでオレンジグミ食べてるの!? 必殺技使うつもりなの!? あぁっ! スパイスケーキ食べないで!? それは術と技の熟練度を80パーセント上昇させるレシピだよ!? 誰で熟練度稼ぐ気なの!? や、やめてぇー! 魔法陣出さないで! 回復魔法セットしてなかったよね二人とも!?」 「もちろん」 二人の瞳からは、いつの間にか光が消えていた。口元に、悪魔もはだしで逃げ出すような笑みを張り付けている。 「これから」 「毎日」 「たっぷり」 「可愛がってあげるのよ」 「「この、二股野郎!!!」」 「うわああああああああ!!! たっ、助けて〜!」 今度ばかりは、天の助けは来なかった。 二股、ダメ、絶対。 おわり |