ルカの大冒険3
3
僕ははっと目を開いた。あたりはすっかり夜になっていた。
僕はぼんやりとした頭を起こして、自分の体をぺたぺたと触った。
どこも欠けていない。かじられた跡もない。
僕が自分の体の無事を確認した瞬間、どっと疲れを感じた。
僕の体は渇ききっていて、一分の活力もなかった。
泣きたかったけど、涙を流す水分もない。
――なんで、僕ばっかりがこんな目に…
僕はくさって、膝を抱えた。
ため息をついて、膝の上に顎をのせる。
その瞬間、視界の端に、目を疑うものが見えた。
なんと、スパーダの帽子が木の間でちらちらと動いていた。
僕は目を見開いた。
幻覚かと思って目をこすってみるが、確かに彼の帽子だ。
――スパーダ!
僕はもたれていた木の根から飛び上がり、頭を枝にぶつけた。ガサガサと音が立つ。
瞬間、帽子の主がビクンと跳ねて、逃げるように走っていってしまった。
僕は慌てて立ち上がり、帽子を追いかけた。
――待って、待ってよ、スパーダ!僕だよ!僕はここだよ!
僕はスパーダの名前を叫ぼうとした。
けど、口の中がからからに渇いていて、かすれた変な声が出るだけだった。
僕の足は遅かった。
もともと走るのは得意じゃないし、足場の悪いジャングルの中を疲れきった体で走るのはこたえる。
僕は何度も転び、体中を泥だらけにしながらスパーダの帽子に追いすがった。
むき出しの顔に枝が引っかかっていくつも切り傷が出来ていた。
でも、僕は夢中で、痛みをかんじなかった。
あの帽子を逃してしまったら、僕は死ぬ!
そう一心に思って、彼の帽子を追いかけた。
でも、彼は無情だった。早い足で、どんどん僕を引き離す。
彼の帽子が大きな木の角を曲がったところで、
僕は木の根に足をひっかけて、転んでしまった。
ざざぁっと体が土をこする。地面が途切れていたようだ。
僕は急な斜面を葉っぱと枝をからませながら転落した。
「うぅっ…」
なんとか頭部は手でかばったけど、全身が痛かった。
多分あちこちに痣が出来ているだろう。
痛みにうめきながら、僕は顔を上げた。
僕の目は再び、信じられないものを見ていた。
そこは小さな集落だった。
泥の家がわらぶき屋根の間から炊事の煙を立ち昇らせている。
がやがやと、褐色の肌をした男たちが僕の前に集まり出した。
トーテムポールの門の前で、僕は彼らを見上げた。
色とりどりな毛皮で必要最低限の衣服をまとい、石槍を持っている。
そして、彼らは人間のドクロを、ネックレスのように首に巻いていた。